横須賀水道発祥の水


 三浦按針やペリー等に代表されるように、神奈川県横須賀市はその歴史に多くの外国人が関係しています。明治時代の初期頃、観音崎灯台の建設に関わった当時の横須賀造船所のフランス人技師フランソワ・レオンス・ヴェルニーもその一人です。

 観音崎付近の東京湾に面する「走水」一帯はその地名が示すように地下水の豊富なところとして知られています。フランソワ・ヴェルニーはこの走水の地で水源を発見し、その湧水を利用して水源から横須賀造船所までの約7kmの間を直径12.5cm長さ1mの管をつなぎあわせて横須賀市内で初めて水道を実現したとのことです。この水道は軍需用として利用されていましたが、後に市に払い下げられ市営水道として民間に利用されるようになりました。

 国道16号線を横須賀から観音崎方面に向けて三春町交差点を左に曲がり海岸沿いを更に行くと、防波堤の終わるあたりの先の左側に横須賀水道局の建物が見えてきます。この水道局を囲む煉瓦塀にフランソワ・ヴェルニーの彫像があります。ヴェルニー像のその手には水瓶を持ち、訪問客に自身が送水した水を提供している姿があります。残念ながら、異常渇水(1996年)のためにこの水瓶からの給水は中断してしまいました。後にわずかにダムの貯水率が復活したため給水は再開されましたが、水瓶からではなくその下に設えられた蛇口から提供される形態となりました。一口含んでみましたが、ちょっと温かった所為もあるのでしょうが特別旨いとは感じませんでした。水道局の提供する水ですから明らかに殺菌してあると感じました(その方が安全と思いますが)。いわゆる水道水です。ただ多量の塩素を使って殺菌しなければのめそうもない水道水に比べれば、遥かによい水であることは確かです。
 後にこの場所を再訪問したときに水汲みし十分に冷やして飲んでみましたら、意外といけました。また、この時の訪問で昭和52年に作成された横須賀風物百選の看板を見つけました(実は上記の記事はこの看板からの引用です)。これによると52年当時でも良質の地下水を供給していたとのことです。今ではどうなのでしょうか。供給され続けているのでしょうか。水源があれば探してみたいものです。